令和7年度東京都働くパパママ育業応援奨励金について社労士が解説
はじめに
「育業」という言葉を聞いたことはありますか?育業とは、東京都が提唱する育児休業の愛称です。育児休業制度を「休む」イメージから「未来を育む大切な仕事」とする考え方を推進する目的で生まれたものです。
昨今、ワークライフバランスの重要性が叫ばれ、性別に関わらず積極的に子育てに参加したいというニーズが特に若い世代を中心に高まっています。従業員が仕事と育児を両立できる柔軟な働き方を可能にすることは、企業にとって喫緊の課題といえます。
このような背景のもと、東京都では育児中の従業員の就業継続や男性従業員の育業を応援する企業に対し、「働くパパママ育業応援事業奨励金」の支給を実施しています。令和7年度は、当該奨励金がさらに拡充され、企業への支援がより手厚くなりました。
特に拡充されたコースとしては「働くパパコースNEXT」コースが挙げられます。最大420万円の奨励金を受け取れる可能性があるなど、非常に魅力的な内容となっています。
本記事では、「働くパパママ育業応援奨励金」の令和7年度の主な内容や、注目のコースについて解説していきます。
令和7年度 働くパパママ育業応援事業
令和7年度「働くパパママ育業応援奨励金」には、以下の4つのコースがあります。コース自体の立て付けは、令和6年度と同様です。
①「働くママコースNEXT」・・・女性従業員が合計1年以上の育業をし、原職等に職場復帰するとともに、企業が就業規則等で法定を上回る育業期間等の規定を新たに整備した場合に、対象となります。
②「働くパパコースNEXT」・・・男性従業員が合計15日以上の育業をし、原職等に職場復帰するとともに、企業が職場環境整備を行った場合に、育業期間に応じて助成されます。
③「パパと協力!ママコース」・・・女性従業員が合計6か月以上1年未満の育業をし、原職等に職場復帰をするとともに、夫婦双方の育業計画書を作成した企業に奨励金を支給することで、夫婦交替等での育業を後押しします。
④「もっとパパコース」・・・複数の男性従業員が合計30日以上の育業をし、原職等に職場復帰するとともに、育業しやすい職場環境を複数整備した企業に奨励金を支給します。本コースだけは企業規模不問であることも人気の秘訣です。
「働くパパママ育業応援奨励金」の受給に取り組んでいる中小企業が、奨励金以外のメリットを受けられる場合があることはご存じでしょうか。例えば、本事業に取り組んでいる中小企業は東京都中小企業制度融資「女性活躍推進融資(TOKYOウィメン・ビズ・サポート)」の対象として、信用保証料2/3補助や利率優遇を受けることが可能です。こちらも制度利用を検討するうえで、知っておきたい内容です。
以下では、4つのコースを詳しく見ていきます。
「働くパパママ育業応援奨励金」各種コースの概要
①働くママコースNEXT
都内中小企業等が対象です。奨励金額は一律125万円(加算により最大175万円)となっています。合計1年以上育業後、原職に復帰し、3か月以上継続雇用し都内在勤の女性従業員がいることが要件です。(この1年には、産前産後休暇と連続して取得する場合、この1年には産前産後休暇を含めることが可能です。)
環境整備要件は以下の通りです。
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対象企業において、以下の1及び2の取組を実施すること。
1.復帰するまでの間に復帰支援として面談を1回以上かつ復帰に向けた社内情報 ・資料提供を定期的に行ったこと。
2.育児・介護休業法に定める取組を上回る、以下のいずれかの制度を就業規則に定めていること。※
ア 育業期間の延長
イ 育業延長期間の延長
ウ 有給の看護休暇の導入
エ 看護休暇の取得日数の上乗せ
オ 時間単位の看護休暇導入(中抜けを認めるもの)
カ 育児による短時間勤務制度の利用年数の延長
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特に、エやオが取り組みやすいと考える企業が多いようです。
令和7年度に新たに追加された加算項目としては以下があります。
①育業を支える同僚への応援評価制度の導入と表彰制度の整備
②育業を支える同僚への応援手当支給
上乗せ金額としては、1項目につき30万円となりますが、どちらも実施した場合の加算は50万円となることに注意が必要です。
②働くパパコースNEXT
こちらも都内中小企業等が対象です。奨励金額は最大で330万円(加算により最大420万円)と、非常に高額となり、見逃せない内容です。
合計15日以上育業後、原職に復帰し、3か月以上継続雇用し都内在勤の男性従業員がいることが従業員要件となります。
環境整備要件は以下の通りです。
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対象企業において、以下のいずれか1つ以上実施したこと。
- 育業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 育業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)
- 従業員の育業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 従業員への育業・産後パパ育休制度と育業促進に関する方針の周知
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各社様のお話をお伺いする中では、2の「相談体制の整備」「相談窓口の設置」を選択される企業が多い印象です。
奨励金額は以下の通り、育業取得期間に応じて段階的に設定されています。
| 育業日数 | 15~29日 | 30~44日 | 45~59日 | 60~74日 | 75~89日 | 90~104日 |
| 受給金額 | 25万円 | 55万円 | 82.5万円 | 110万円 | 137.5万円 | 165万円 |
| 育業日数 | 105~119日 | 120~134日 | 135~149日 | 150~164日 | 165~179日 | 180日以上 |
| 受給金額 | 192.5万円 | 220万円 | 247.5万円 | 275万円 | 302.5万円 | 330万円 |
令和7年度の新設加算項目としては以下の通りです。
| 加算項目 | 加算額 | |
| 加算① | 管理職等がモデルとなって育業し、情報発信 | 20万円 |
| 加算② | 育業メンター制度の整備とパパ向け育業マニュアルの作成 | 20万円 |
| 加算③ | 育業を支える同僚への応援評価制度の導入と表彰制度の整備 | 30万円 |
| 加算④ | 育業を支える同僚への応援手当支給と育業応援プランシート作成 | 30万円 |
ただし、加算③と加算④の両方に取り組んだ場合は、加算金額は合計50万円となります。。
加算①~④すべての取り組み合計で最大90万円、育児日数180日以上の奨励金の場合330万円と合わせ、最大420万円の受け取ることができます。
③パパと協力!ママコース
本コースによる都内中小企業等への奨励金は、一律で100万円です。女性従業員が合計6ヶ月以上1年未満の育業をし、夫婦交替等で育業を推進する企業が支援の対象です。具体的には以下の要件が求められます。
・合計6ヶ月以上1年未満の育業後、原職に復帰し、3か月以上継続雇用し都内在勤の女性従業員がいる。(こちらも産前産後休暇と育業が連続する場合、産前産後休業期間も育業に含めることが可能です。)
・対象従業員の子の父が、合計30日以上の育業をしていること。(予定であっても可能とされています。)
・対象従業員に対し「東京都からのお知らせ」を案内したこと。
・育業促進等に関する取り組み計画書を作成すること。
プロセスの中で、申請企業から対象従業員に対して「東京都からのお知らせ」の案内も求められることに留意が必要です。こちらは、男性の育業促進を目的とした文書であり、対象従業員の子の父から、その職場に渡ることが想定されています。
④もっとパパコース
都内企業等(本コースにおいては中小企業要件はなく、企業規模は不問です)への奨励金額は、最大で170万円となっています。複数の男性従業員(2人以上最大5人まで)が育業をし、育業しやすい職場環境を複数整備した企業が支援の対象です。まず一人目と二人目の男性育業取得で80万円が支給、その後3人目以降5人目までは1人につき30万円が加算という形で、170万円までの奨励金を受け取ることが可能です。
従業員要件には、「子が2歳に達するまでにそれぞれ合計30日以上の育業」、「原職復帰後3か月以上の継続雇用」、「対象男性従業員のうち少なくとも1人は申請受付期間が令和7年4月1日以降に係っていること」等があります。特に3点目の育業の時期に関しては、かならずご確認頂きたいポイントです。
働くパパコースNEXT同様、以下の環境整備要件が求められますが、本コースにおいては環境整備を行った時期も問われます。
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対象企業において、育児・介護休業法に基づく以下の環境整備について、令和7年4月1日以降に複数実施したこと(うち、1つ以上の環境整備は令和6年度に未実施であること)
- 育業・産後パパ育休に関する研修の実施
- 育業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)
- 従業員の育業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
- 従業員への育業・産後パパ育休制度と育業促進に関する方針の周知
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以上、4コースの概要を確認しましたが、実際に奨励金の申請を行う際には、申請書類の記載、添付資料、期限等、細かい部分を多々確認する必要があります。各社様が適正な申請を行うためにも、社労士等専門家のサポートを是非ご検討いただきたく考えます。
おわりに
令和5年度厚生労働省の雇用均等基本調査において、男性育児休業取得率は、2022年度17.13%⇒2023年度30.1%になり、過去最高の伸び率となりました。
政府は、更にこの流れを加速させたいとして、2025年までに50%、令和12年には85%の男性育児休業取得率を目指しています。
東京都でもこの流れを受け、男女共により一層、育児と仕事の両立を推進しています。今回の奨励金制度を利用しながら男性従業員が育業を胸を張って取得できるようになることは、配偶者である女性従業員自身のキャリアップにもつながり、職場全体にポジティブな変化をもたらすといえます。
人口減少の社会において、従業員が働きやすく子育てしやすい環境を手に入れることは結果として従業員の退職を防止し、自社の持続可能性を高めることに繋がります。まずは奨励金等の確認をファーストステップとして、検討を始められることをお勧めします。
【執筆者プロフィール】
![]() 寺島戦略社会保険労務士事務所 |
寺島有紀寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。一橋大学商学部卒業。 新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。 現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。 |

