育児休業等給付における新たな給付金創設について社労士が解説
はじめに
2025年4月に育児介護休業法が大きく改正され、それにともない雇用保険の育児介護等給付についても制度の変更がなされます。今回は2025年4月1日に創設される出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金について社会保険労務士が解説いたします!
育児休業等給付について
育児休業期間中、ノーワークノーペイの原則によって給与を受けられない従業員の給与補償として、雇用保険の育児休業等給付があります。一定の被保険者期間を有する被保険者が育児休業または出生時育児休業を取得した場合、育児休業(出生時育児休業)期間中の賃金が休業開始前の8割未満しか受けられない時は、雇用保険から育児休業給付金または出生時育児休業給付金が支給されます。
これに加え、2025年4月1日から新たに出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金が創設されました。それぞれの給付金の対象とする子の年齢は以下の表のとおりです。
(厚生労働省 育児休業等給付の概要より)

出生後休業支援給付金
共働き・父親もともに子育てに参加する共育てを推進するため、子の出生直後の一定期間に、原則として両親ともに14日以上の育児休業を取得した場合、出生後休業支援給付金が最大28日間支給されます。出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金と併せて受給することができます。
出生後休業支援給付金は、両親ともに育児休業を取得した場合に支給されますが、子の出生日の翌日において、次の①~⑦のいずれかに該当する場合は、被保険者本人だけが14日以上の育児休業を取得した場合でも支給されます。なお、被保険者が父親の場合は、子が養子でない限りは、必ずいずれかの事由に該当するため母親(配偶者)の育児休業取得の有無にかかわらず受給できます。
① 配偶者がいない・行方不明の場合(ただし、配偶者が勤務先において3か月以上無断欠勤が続いている場合または災害により行方不明となっている場合に限る)
② 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
③ 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
④ 配偶者が無業者
⑤ 配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
⑥ 配偶者が産後休業中
⑦ 配偶者が日々雇用される者など育児休業をすることができない、育児休業給付金の受給資格がないなど、1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない場合。(単に配偶者の業務の都合で育児休業を取得しない場合は含まない)
1.支給要件
以下AとB両方の要件を満たした場合
A. 被保険者が対象期間に、同一の子について、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受けられる(出生時)育児休業を通算して14日以上取得したこと。
B. 被保険者の配偶者が、子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと。または、子の出生日の翌日において上記①~⑦に該当していること
対象期間とは、被保険者が産後休業をしていない場合は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日までをいい、被保険者が産後休業をした場合は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日」までの期間をいいます。
2.支給額
支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(上限28日)×13%
休業開始時賃金日額:同一の子に係る最初の出生時育児休業または育児休業開始前直近6カ月に支払われた賃金の総額を180で割った額
出生後休業支援給付金と出生時育児休業給付金または育児休業給付金と併せて給付率80%になりますが、育児休業中は申し出により健康保険料・厚生年金保険料が免除されており、給与が支給されない場合は雇用保険料の負担がありません。また育児休業等給付は非課税であり、給与が支給されない場合は課税額もありません。休業開始時賃金日額には上限額があるものの、実質的には手取りの10割相当の給付になるように設計されています。
ただし、あくまでも出生時育児休業給付金や育児休業給付金が受給できる場合の上乗せ支給であるため、育児休業を取得していても、就労状況や賃金支払い状況によって、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が不支給の場合は、出生後休業支援給付金も支給されませんのでご注意ください。
(厚生労働省 出生後休業支援給付金リーフレットより)
3.2025年4月1日より前から引き続いて育児休業をしている場合の取り扱い

支給要件Aの対象期間の始期である「子の出生日または出産予定日のうち早い日」を「2025年4月1日」と読み替えて要件を確認します。
育児時短就業給付金
雇用保険の被保険者が2歳に満たない子を養育するために、所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなどの要件を満たしたときに支給されます。
1.支給対象者
育児時短就業給付金は次の①②の要件をいずれも満たす者が支給対象となります。
①2歳未満の子を養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者であること。つまり、週所定労働時間が20時間以上であること。
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き(復職日から育児短時間勤務開始まで14日以内であれば可)、同一の子について育児短時間勤務を開始したこと。または、育児短時間勤務開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は80時間以上ある)完全月が12か月あること。
※特別な労働時間制度の適用を受けている場合
・フレックスタイム制の適用を受けている場合
清算期間における総労働時間を短縮して就業する場合は、育児時短就業とみなされます。ただし、清算期間における総労働時間を変更せずに、就労しなかった部分について清算期間ごとに欠勤控除を受ける場合は、育児時短就業とみなされません。
・変形労働時間制の適用を受けている場合
対象期間の総労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業とみなされます。対象期間の総労働時間を変更せずに、対象期間中の1週間の平均所定労働時間を下回る期間は、育児時短就業とみなされません。
・裁量労働制の適用を受けている場合
みなし労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業とみなされます。
・シフト制で就労する場合
実際の労働時間に基づいて1週間当たりの平均労働時間を算定したとき、短縮が確認できるときは育児時短就業とみなします。
2.支給対象月
・初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
・1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
・初日から末日まで続けて育児休業給付金または介護休業給付を受給していない月
・高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
3.支給対象期間
・育児時短就業に係る子の2歳の誕生日の前日が属する月
・産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
・育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために育児時短就業を開始した日の前月末日が属する月
・子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日が属する月
4.支給額
(1)支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×10%
(2)支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超から100%未満の場合
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×調整された支給率


(3)支給対象月に支払われた賃金額と(1)または(2)による支給額の合計額が支給限度額(459,000円 ※2025年7月31日まで)を超える場合
支給額=支給限度額-支給対象月に支払われた賃金額
ただし、支給対象月に支払われた賃金額が、育児就業開始時賃金月額の100%以上の場合や、支給限度額以上の場合など、育児時短就業の前後で賃金が減少していないと認められる場合や、(1)~(3)による支給額が最低限度額以下の場合には支給されません。

(厚生労働省 育児時短就業給付の内容と支給申請手続きより)
5.注意点
・育児介護休業法において、3歳に満たない子を養育する労働者について、所定労働時間の短縮措置(1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置)が義務付けられておりますが、育児時短就業給付金における短縮後の1週間あたりの所定労働時間に上限・下限はありません。
・被保険者が子を養育するために正社員から短時間正社員やパートタイム労働者に転換したために1週間の所定労働時間が短縮された場合も、育児時短就業として取り扱います。
・短縮後の1週間の所定労働時間が20時間を下回る場合は、原則として雇用保険の被保険者資格を喪失することになり、育児時短就業給付金の支給対象外となります。ただし、短縮後の所定労働時間が20時間を下回る場合であっても、子が小学校就学の始期に達するまでに1週間の所定労働時間が20時間以上の労働条件に復帰することが前提であることが、就業規則等の書面で確認できる場合は、育児時短就業とみなされます。
・育児時短就業給付金の受給手続きを行っていた被保険者が、転職先で雇用保険の被保険者となり、2歳未満の子を養育するために育児時短就業する場合は、転職先で育児時短就業給付金の支給が再開できます。(離職から新たに被保険者となる前までに空白期間がある場合は、その間に基本手当等の受給資格決定を受けていない場合に限ります)
終わりに
いかがでしたでしょうか?育児休業や育児短時間勤務を取得したい、又は取得したが、賃金が減ることがネックになっていたところを今回新たな給付が創設されることで、男性の出生時育児休業取得を促進し、パパとママが出生後の時期に一緒に育児参加できるように促すとともに、育児休業後も離職ではなく時短でも復職することを後押しする制度となっております。育児介護休業法改正に伴う準備に加え、従業員からも問い合わせが増えてくることが予想されますので、この機会に新たな給付制度の内容確認につながれば幸いです。
【執筆者プロフィール】
![]() 寺島戦略社会保険労務士事務所 |
寺島有紀寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。一橋大学商学部卒業。 新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。 現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。 |

