選択的週休3日制の導入について社労士が解説

はじめに

東京都の小池都知事は、2025年4月からフレックスタイム制度を活用し、週休3日の働き方を可能にする方針を示しました。希望すれば週の休みを1日増やせる「選択的週休3日制」の導入として東京都職員の月の所定総労働時間(155時間/4週間)をそれぞれの都合にあわせて配分し、週1日の休日取得を可能にするとしています。狙いは女性の活躍推進、子育てや介護など、さまざまな事情に対し働きやすい環境の選択肢を増やし、実現していくことですが、これから各企業柔軟な働き方を求められる時代において、今回は選択的週休3日制の導入について社会保険労務士が解説します!

 

週休3日制とは

週休3日制とは、1週間のうち必ず3日間の休みを設ける制度のことです。労働基準法では法定休日は「1週間に1日または4週間に4日の休日」と義務づけられているのみで、まだ週休3日制は一般的ではありません。業態によっては完全週休2日制より少ない週休制もまだあります。

日本で週休3日制を導入しているのは、大手企業(日立製作所、日本IBM、パナソニックホールディングスほか)や自治体の一部です。現在、完全週休2日制よりも休日日数の多い企業の割合を見てみると、完全週休3日制は企業全体のうち0.3%、何らかの週休3日制で1.6%(厚生労働省/令和6年調査)しかありません。

週休3日制の導入状況

日本では生産年齢人口(15歳~64歳)の減少によりどの業界においても労働力不足が叫ばれ、週休3日制の導入を実施している企業は少ない現状です。その中で週休3日制を導入している企業の状況は、どのようになっているのでしょうか

日立製作所では、月の総労働時間や給与を維持し、従来と同じ待遇のまま週休3日制を導入しています。

みずほフィナンシャルグループでは、副業や介護、学び直しを目的に、希望者は週休3日・週休4日を選択できます。給与は週休3日の場合8割程度、週休4日の場合6割程度に減額されます。

ユニクロでは、変形労働時間制を用いて1日10時間×4日勤務として週休3日制を導入し(地域正社員対象)、給与も従来と変わらず勤務できる仕組みを採用しています。

週休3日制の運用タイプ

週休3日制には、大きく分けて3つの運用タイプがあります。

 

①給与維持・月の総労働時間維持型

月の総労働時間を維持しつつ、休日が1日増え、給与も維持するタイプです。

労働時間の上限を週ではなく、月・年単位で定め、その範囲内で労働時間を調整できる働き方です。業務の繁忙期・閑散期に合わせて自分で調整でき、柔軟な働き方が可能になります。

また、月もしくは年単位の労働時間を維持すれば、給与も維持されます。自分の裁量でワークライフバランスが保てるメリットがある一方で、労働時間を調整する責任やマネジメントが他の運用タイプよりは求められます。制度導入前と同等の生産性を維持するためには業務改善が必須となります。

 

②給与減額・労働時間短縮型

休日が1日増え、週の労働時間が減少し、その分給与が減額するタイプです。

たとえば、完全週休2日制で週40時間労働だったのが、週休3日制になることで週32時間労働に変わります。労働時間短縮に伴い、給与は従来の2割減となります。このタイプは従業員から不満の声が上がる可能性があり、事前の説明が重要です。

 

③給与維持・一日の労働時間延長型 

休日が1日増える分、1日の労働時間を増やし、週の総労働時間を維持するタイプです。

従来1日8時間×週5日=40時間だったとします。週休3日になった場合でも週の労働時間は変わらないので1日10時間×週4日=40時間になります。つまり1日の労働時間が長くなる一方、週の労働時間が変わらないので収入も維持できます。

 

週休3日制のメリット・デメリット

企業にとって週休3日制にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

【メリット】

  • 多様な労働力の活用
  • 36協定上限遵守
  • 従業員のワークライフバランス向上
  • 人材確保における競争力向上
  • 従業員のリスキリング・リカレント教育の還元
  • 人件費の削減(給与・賞与・社会保険料) 等

 

【デメリット】

  • 生産性が落ちないよう業務効率化が必要
  • 顧客対応部署・職種の場合不在時でも業務が回るような体制づくりが必要
  • 週休2日制の従業員に負担や不公平感が生まれないように設計する必要あり
  • 副業・兼業の制限が難しく仮に認める場合の問題あり(情報漏洩のリスク、労働時間通算による労務管理の煩雑化、心身の疲労) 等

 

週休3日制の導入の流れ

具体的にはどのような流れで週休3日制を導入すればよいのでしょうか。

導入事例は徐々に増えてきているものの、まだまだ導入している企業は少ないため、いきなり全社的に導入するのではなく、まずは適用対象の範囲を定め段階的に導入していくことをお勧めします。その際検討しておくと良いのは以下の項目と考えます。

 

  • 全社的に週休3日制と導入するか。
  • 特定の部署や特定の業務によって対象を制限するか
  • 希望者全員を適用とするか。育児や介護など選択目的によって制限するか。
  • 通常の週休2日制と週休3日制を行ったり来たりできる制度にするか。
  • 週休2日制の正社員からの転換に会社の許可を必要とするかどうか。

 

賃金と評価のルールを決める

週休3日制を導入する場合、労働時間が減る分、給与を減額する場合、ノーワークノーペイの原則に従っているため同一労働同一賃金に反しません。また、制度の導入を機に労働時間ではなく成果報酬型にするなど評価のルールを変更する方法もあるでしょう。そのタイプの週休3日制を導入する場合でも不公平感が生じないよう以下のような制度設計の理由付けが重要となります。

 

  • 役職手当や住宅手当など1ヶ月ごとに定額で支払われる各種手当の支給基準
  • 賞与や退職金の支給基準
  • 評価ルールの見直し
  • 異動や残業ルールの見直し 等

 

就業規則の改定と周知

選択的週休3日制は統一的に適用されるルールであるため、就業規則に定めて周知しておくことが後々のトラブルを予防します。特に就業規則には労基法により定められた絶対的必要記載事項があり、これに該当する項目は必ず定めておく必要があります。週休3日制に関係する絶対的必要記載事項は以下になります。

  • 始業及び終業の時刻
  • 休日休暇
  • 賃金の決定、計算及び支払いの方法

 

また、1日の労働時間を延長する場合は1日8時間の法定労働時間を超えて働かせることになりますので、変形労働時間制を導入する必要があります。

導入後の労務的注意点

既存の従業員について大幅な労働条件の変更になりますので、週休3日制を選択する従業員には労働条件通知書(雇用契約書)を発行しておくのが良いでしょう。

兼業・副業を認める場合は、心身の疲労と労働時間通算の問題がありますので以下の点に留意しましょう。

①事業主には労働契約法に基づき従業員が過度の疲労等によって心身の健康を損なわないように配慮する義務があります。また、過労によって本業に支障が及ぶようであれば本末転倒になりますので、従業員の健康状態やパフォーマンスをよく観察しておく必要があります。

②従業員が雇用される形で兼業・副業を行った場合は、労働基準法に基づき労働時間を通算する必要があります。通算した労働時間が法定の1日8時間または1週40時間を超える場合は36協定の締結・届出、割増賃金の支払いが発生する可能性があります。

 

終わりに

いかがでしたでしょうか。週休3日制の制度の特徴や、メリット・デメリットを理解し、自社において柔軟な働き方として適しているか検討が必要です。柔軟な働き方が選択できることで人材確保における競争力向上につながることも期待できます。一方で生産性をあげるための業務効率化などの検討すべき事項も多く、また週休3日制を適用する従業員を限定的にする場合などは他の従業員への負担や待遇面なども考慮しながら慎重に導入を進める必要があるでしょう。

【執筆者プロフィール】

寺島戦略社会保険労務士事務所

寺島戦略社会保険労務士事務所

寺島有紀

寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。

一橋大学商学部卒業。

新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。

現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。