2025年4月~育児介護休業法の改正について社労士が解説
はじめに
2025年4月以降、男女ともにより一層育児と仕事を両立ができるようになり、育児期の柔軟な働き方を実現し、従業員が働きやすく子育てしやすい環境を手に入れることを目的として育児介護休業法が改正施行されます。
厚生労働省の雇用均等基本調査において男性育休取得率は、2022年度17.13%⇒2023年度30.1%になり、過去最高の伸び率となりましたが、この背景としては、2022年10月に産後パパ育休の創設、育児休業の分割取得によりまずは育休取得者を増加させ、2023年4月には1000人超の企業が自社HP等で育児休業取得状況の開示義務、さらに上場企業では2023年3月期決算より有価証券報告書の中でも男性育児休業取得率の開示が義務化等、育児休業への取り組みが一気に加速したことが理由として挙げられます。日本政府は、更に男性の育児休業取得を伸ばしたいという狙いがあり、2025年までに50%を目指しているため、今回の改正が行われました。今回は2025年4月~の育児介護休業法の改正について解説いたします!
1.主な改正内容

それぞれの詳細を見ていきましょう。
1.育児休業給付の給付率を80%へ引き上げ(出産後休業支援給付金の創設)
<施行>2025(令和7)年4月1日
<現状及び背景>
- 育児休業を取得した場合、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%が支給。
- 若者世代が、希望どおり、結婚、妊娠・出産、子育てを選択できるようにしていくため、夫婦ともに働き、育児を行う 「共働き・共育て」を推進する必要があり、特に男性の育児休業取得の更なる促進が求められる。
<改正点>
- 子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者 の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付と合わせて給付率80%(手取りで100%相当)へと引き上げることとする。
※配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる。
以下の取得イメージもご覧ください。

2.育児時短就業給付の創設
<施行>2025(令和7)年4月1日
<現状及び背景>
- 現状では、育児のための短時間勤務制度を選択し、賃金が低下した労働者に対して給付する制度はない。
- 「共働き・共育て」の推進や、子の出生・育児休業後の労働者の育児とキャリア形成の両立支援の観点から、柔軟な働き方として、時短勤務制度を選択できるようにすることが求められる。
<改正点>
- 被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合の新たな給付として、育児時短就業給付を創設。
- 給付率については、休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する観点から、時短勤務中に支払われた賃金額の10%とする。

3.育児のためのテレワーク導入の努力義務化、短時間勤務の代替措置にテレワークを追加
<施行>2025(令和7)年4月1日
努力義務:選択時は就業規則等の見直し
4.所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
<施行>2025(令和7)年4月1日
義務:就業規則等の見直し

5.子の看護休暇の見直し
<施行>2025(令和7)年4月1日
義務:就業規則等の見直し

6.育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大
<施行>2025(令和7)年4月1日
義務
<現状>
- 従業員数1000人超の企業に公表義務
<改正点>
- 従業員数300人超の企業に公表義務(育児休業には、産後パパ育休を含む。)
<公表内容>
- ①または②のいずれかの公表義務

7.柔軟な働き方を実現するための措置が事業主の義務に
<施行>2025(令和7)年10月1日
義務:就業規則等の見直し
(1)育児期の柔軟な働き方を実現するための措置
- 事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの選択し講ずべき措置の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要がある。
- 労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができる。
- 事業主が講ずる措置を選択する際、過半数組合等からの意見聴取の機会を設ける必要がある。


望ましい⇒*家庭や仕事の状況が変化する場合があることを踏まえ、労働者が選択した制度が適切であるか確認する目的で、上記の時期以外(育児休業後の復帰時、短時間勤務や対象措置の利用期間中など)にも定期的に面談を行うこと。
8.仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
<施行>2025(令和7)年10月1日
義務
(1)妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取
事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければならない。

望ましい⇒*意向聴取の時期は、①、②のほか、「育児休業後の復帰時」や「労働者から申出があった際」等にも 実施すること。
(2)聴取した労働者の意向についての配慮
事業主は、(1)により聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について
自社の状況に応じて配慮しなければならない。具体的な配慮の例としては以下の例 が挙げられています。
例)・勤務時間帯、勤務地にかかる配慮
・両立支援制度等の利用期間等の見直し、業務量の調整、労働条件の見直し等
望ましい⇒*子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること。
*ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること。

終わりに
いかがでしたでしょうか。今回の改正は事業主が子育て中の従業員の生活をより理解し、特に3歳以降や小学校就学後の時期においても、それらをサポートすべく就業対応措置を行うことが多く盛り込まれている点もポイントと考えます。人口減少の社会において子育て対策の一端を担うことは結果として従業員の退職を防止し、自社の持続可能性を高めることに繋がります。就業規則の改定や社内周知の方法など、今回の改正により必要な社内対応をリストアップし、早めに準備を始めていただくとともに、職場全体で改正内容を共有することでお互いの立場を慮りながら企業活動が活性化することが望まれます。
【執筆者プロフィール】
![]() 寺島戦略社会保険労務士事務所 |
寺島有紀寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 社会保険労務士。一橋大学商学部卒業。 現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。 HP: https://www.terashima-sr.com/ 2020年9月15日、「IPOをめざす起業のしかた・経営のポイント いちばん最初に読む本」(アニモ出版)が発売されました。 https://www.amazon.co.jp/dp/4897952417/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_TQ0xFb39THS7W その他: 2020年7月3日に「Q&Aでわかる テレワークの労務・法務・情報セキュリティ」が発売されました。代表寺島は第1章労務パートを執筆しています。 https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4297114488/gihyojp-22 2019年4月に、「これだけは知っておきたい! スタートアップ・ベンチャー企業の労務管理――初めての従業員雇用からIPO準備期の労務コンプライアンスまで この一冊でやさしく理解できる!」を上梓。 |

